映画『ナイトクローラー』公式サイト

ジェイク・ギレンホールの恐るべき怪演に絶賛の悲鳴!アカデミー賞®ノミネートの常軌を逸した大胆かつ緻密な脚本が視聴率至上主義のテレビ業界に潜む影に迫る!

8月22日(土)ロードショー
ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他全国順次

監督・脚本:ダン・ギルロイ
主演:ジェイク・ギンレイホール『ミッション:8ミニッツ』、レネ・ルッソ『マイティ・ソー』シリーズ,ビル・パクストン『タイタニック』
提供:カルチュア・パブリッシャーズ、ギャガ  配給:ギャガ

INTRODUCTION

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視聴率至上主義のテレビ業界を舞台に、アカデミー賞®ノミネートの常軌を逸した大胆かつ緻密な脚本が、〈日常の隣で笑う狂気〉に迫る―

まだハリウッドが取り上げたことのないテーマを、センセーショナルかつリアルに描き、全米公開時には週間興行収入ランキング第1位を獲得、本年度賞レースを席巻し、アカデミー賞®ノミネートも果たした震撼の衝撃作が、遂に日本登場!!
L.A.では人々が眠りにつく間、傍受した警察無線からけたたましく音が鳴り響くのをスタート合図に、猛スピードで車を走らせ、イチ早く事件・事故現場に駆けつけて被害者にカメラを向ける者たちがいる。報道スクープ専門の映像パパラッチ、通称“ナイトクローラー”だ。彼らはセレブパパラッチのように執拗に、死臭を求めるハイエナの如く貪欲に、生々しく刺激的な映像を求めて夜の街を這いまわる。そして、手に入れた映像をテレビ局に売りさばき、カネを得る。
本作は、視聴率のために倫理をも踏み外した映像を欲しがるテレビ業界の裏側と、それを非難しながらも求める現代社会の闇に迫る。主人公ルーを演じるのは、『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー賞®にノミネートされたジェイク・ギレンホール。我々の隣にもいるごく普通の男に潜む、底なしの狂気を恐ろしくも見事に演じきっている。全米NO.1映画評サイト【ロッテン・トマト】で驚異の満足度95%を叩き出した映画至上かつてない“戦慄のハッピーエンド”を体験せよ!

STORY

“ナイトクローラー”と呼ばれる報道(スクープ)パパラッチとなった男は、視聴率がとれる刺激的な映像を手に入れるため、行動をエスカレートさせていく―。

 眠らないロサンゼルスの街で、闇にまぎれて金網を盗もうとしている男(ジェイク・ギレンホール)がいる。呼び止める警備員を殴り倒した男は、戦利品を車に載せて工場に売りつける。そこで男は「僕は勤勉で志が高い人間だ」と自信満々で自分を売り込み、「コソ泥は雇わない」と断られても笑顔で去って行く。自分をルーと呼ばせる、この不気味な男の名は、ルイス・ブルーム。友達も家族もなく、ネットとテレビと共に孤独に暮らしている。
 帰り道、交通事故現場を通りかかったルイスは、事件や事故報道のスクープを専門にしている映像パパラッチ、通称〈ナイトクローラー〉と遭遇する。悲惨な映像がテレビ局に売れると聞いたルイスは、盗んだ自転車と交換にビデオカメラと無線傍受器を手に入れる。
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 その夜から警察無線を盗み聞き、車で現場に急行するようになったルイスは、カージャックの被害者の撮影に成功する。しかも先に到着していたナイトクローラーより接近した生々しい映像だ。 あるテレビ局に早速映像を持ち込むと、女性ディレクターのニーナ(レネ・ルッソ)が映像を買い取ってくれた。そこで「視聴者が求めているのは、刺激的な画。さらに望ましいのは被害者が郊外に住む白人の富裕層で、犯人はマイノリティや貧困層。」とアドバイスをもらう。ルイスは、何か撮ったら一番に彼女に連絡すると約束するのだった。
 本格的に事業を始める決意をしたルイスはアシスタントを募集し、面接に来た住所不定で何の特技もないリック(リズ・アーメッド)を僅かな賃金で雇う。助手席で進路を指示する仕事さえ満足にできないリックを冷酷に叱咤するルイス。 
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 ある夜、住宅街の発砲事件に駆けつけるが、負傷者もなくハデな映像は撮れそうになかった。ルイスは被害宅の裏に周りこみ、関係者たちの隙をついてコッソリ中に忍び込み、冷蔵庫の生々しい銃弾跡の横に家族の写真を置いて撮影する。映像を持ち込まれたニーナは「最高の素材よ!」と絶賛、編集担当の「不法侵入だ」という制止を振り切って放映する。
 それからもセンセーショナルなスクープ映像を次々にモノにしたルイスは、車はスピードの出る赤い高級車に、機材も最新型に買い替える。壮絶な横転事故の無線を傍受した時も、その車で誰よりも早く現場に駆け付け、絶好のアングルのために、ルイスは血だらけの遺体を車の下から引きずり出すという暴挙に出る。
ネットで学んだビジネスノウハウや格言を狂信し、成功だけに邁進するルイスに、怖いものなど何もなかった。
 そんな絶頂への階段を駆け上がるルイスに、思わぬ落とし穴が待っていた。リックのミスで飛行機墜落事故という最大のスクープを逃してしまったのだ。過激な視聴率争いからニーナにも激しく罵られ、進退窮まったルイスは遂に究極の一線を超えるのだが──。

CAST

ジェイク・ギレンホール (ルイス・ブルーム)

ジェイク・ギレンホール写真
1980年12月19日アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。
父は映画監督のスティーヴン・ギレンホール、母はプロデューサー兼脚本家ナオミ・フォナー。姉は女優マギー・ギレンホール。大ヒットコメディ『シティ・スリッカーズ』(91)で主演ビリー・クリスタルの息子役としてスクリーンデビューを飾る。初主演映画『遠い空の向こうに』(99)で批評家たちの高い評価を受け、一躍ハリウッド注目の存在となる。01年には『ドニー・ダーコ』で、複雑な感情を持つ主人公をみごとに演じきり、若手実力派の評価を確固としたものにする。05年アン・リー監督作『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー賞®助演男優賞にノミネート。『ラブ&ドラッグ』(11)では、ゴールデングローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされている。その他『ムーンライト・マイル』(02)、『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』(05)、『ゾディアック』(06)、『マイ・ブラザー』(09)、『プリズナーズ』(13)、『複製された男』(13)など。最新作は、ジョシュ・ブローリン、ジェイソン・クラーク共演の『Everest』(原題/15公開予定)。

レネ・ルッソ (ニーナ・ロミナ)

レネ・ルッソ写真
1954年2月17日アメリカ・カリフォルニア州バーバンク生まれ。
幅広い役柄で多彩な才能を見せてきたベテラン女優。18歳の時にローリング・ストーンズのコンサートでスカウトされ、ファッションモデルになる。その後すぐにニューヨークに移り住み、トップモデルとなる。89年『メジャーリーグ』で映画デビュー。その後『リーサル・ウェポン3』(92)、『ザ・シークレット・サービス』(93)、『アウトブレイク』(95)、『ゲット・ショーティ』(95)、『ティン・カップ』(96)、『身代金』(96)、『リーサル・ウェポン4』(98)、『ショウタイム』(02)など数々の話題作に出演。最近の出演作は、フリッガ役で出演した『マイティ・ソー』(11)、その続編『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(13)。

リズ・アーメッド (リック)

リズ・アーメッド (リック)写真
英国インディペンデント映画賞の主演男優賞に3度ノミネート。俳優キャリアに加えて、ミュージシャンとしても活躍している。その他の出演作に『センチュリオン』(10・未)、『トリシュナ』(11・未)、『ミッシング・ポイント』(12・未)、『クローズド・サーキット』(13・未) 、など。

ビル・パクストン (ジョー・ロダー)

ビル・パクストン (ジョー・ロダー)写真
1955年5月17日 アメリカ・テキサス州フォートワース生まれ。
『トゥルーライズ』(94)、『アポロ13』(95)、『ツイスター』(96)、『タイタニック』(97)、『U-571』(00)、『バーティカル・リミット』(00)、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)など大作の出演が続く傍ら、『モーチュアリー』(83・未)、『ニア・ダーク/月夜の出来事』(87)、『ボクシング・ヘレナ』(93)、ドキュメンタリーIMAX映画『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』(03)などの出演作でカルト的人気を得る。近年はテレビドラマシリーズでも活躍。特に5シーズンに渡って放映され好評を博したHBOのテレビシリーズ「ビッグ・ラブ」で3度ゴールデングローブ賞にノミネートされている。

STAFF

ダン・ギルロイ(監督、脚本)

ダン・ギルロイ写真
1959年6月24日アメリカ、カリフォルニア州サンタモニカ生まれ
本作が初監督作品となる。脚本家として『トゥー・フォー・ザ・マネー』(05)、『落下の王国』(06)、『リアル・スティール』(11)などを担当、また兄トニー・ギルロイが脚本・監督を務めた『ボーン・レガシー』(12)の共同脚本も手掛けている。芸術一家の生まれで、父フランク・D・ギルロイはトニー賞およびピューリッツァー賞受賞戯曲家、双子の兄ジョン・ギルロイは『フィクサー』(07)、『ソルト』(10)、『ボーン・レガシー』(12)、『パシフィック・リム』(13)などを手がけた映画編集者。レネ・ルッソは妻。

ロバート・エルスウィット(撮影)

アメリカ・カリフォルニア州生まれ。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)でアカデミー賞®最優秀撮影賞および全米撮影監督協会賞を獲得。『グッドナイト&グッドラック』(05)でもインディペンデント・スピリット賞等数々の賞を受賞している。その他『激流』(94) 、『ブギーナイツ』(97)、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(97)、『マグノリア』(99)、『シリアナ』(05)、『フィクサー』(07)、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11)、『ボーン・レガシー』(12)など多くの話題作を撮影。最近作はポール・トーマス・アンダーソン監督作『インヒアレント・ヴァイス』(14)。次回作は『ミッション:インポッシブル 5/ローグ・ネイション』(8月7日公開)。

ジョン・ギルロイ(編集)

ダン・ギルロイ監督の双子の兄。ジョン・ギルロイは本作で母を除き親兄弟全員の監督作品の編集を務めるという画期的達成を遂げた。兄のトニー・ギルロイとは、これまで『ボーン・レガシー』(12)、『デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~』(09)、『フィクサー』(07)3作でタッグを組んでいる。『フィクサー』ではアカデミー賞®7部門にノミネートされた他、ジョン自身も英国アカデミー賞と全米映画編集者協会賞にノミネートされた。最近は『パシフィック・リム』(13) を手がけた。

ケヴィン・カヴァナー(プロダクション・デザイン)

サンフランシスコで3年間フランシス・フォード・コッポラのアシスタントを務めた後、ドリュー・バリモアの監督デビュー作『ローラーガールズ・ダイアリー』(09)で初めてプロダクションデザイナーの仕事に就く。その後、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト ライジング』(12)で共同デザイナーを務める。また『ダークナイト』、『プレステージ』などのクリストファー・ノーラン監督作では美術監督も務めている。近作は『スパイ・レジェンド』(14)。

エイミー・ウェストコット(衣装デザイン)

『ブラック・スワン』(10)の衣装デザインで英国アカデミー賞にノミネートされた他、衣装デザイナー組合賞を獲得。2008年アカデミー賞®にノミネートされたダーレン・アロノフスキー監督作『レスラー』ではミッキー・ロークの衣装を担当。同作で衣装デザイナー組合賞を獲得。その他の代表作には『イカとクジラ』(05)、『賢く生きる恋のレシピ』(08)、『13/ザメッティ』(10)、『運命の元カレ』(11)、『アフター・アース』(13)などがある。

ジェームズ・ニュートン・ハワード(音楽)

現在映画音楽界で最も多才かつ尊敬を集める作曲家の一人。アカデミー賞®には『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』(91)、『ハリソン・フォード 逃亡者』(93)、『ベスト・フレンズ・ウェディング』(97)、『ヴィレッジ』(04)、『フィクサー』(07)、『ディファイアンス』(08)で作曲賞に6度、『ジュニア』(94)、『素晴らしき日』(96)で歌曲賞に2度ノミネートされている。2009年『ダークナイト』ではハンス・ジマーと共にグラミー賞を獲得。その他グラミー賞は5度ノミネート、ゴールデングローブ賞4度ノミネート。音楽を担当した映画は100本を超える。最近では『マレフィセント』(14)を担当、最新作は『Pawn Sacrifice』(16年公開予定)。

PRODUCTION NOTES

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  • 歪んだ現代社会が生んだ、主人公ルイス

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    脚本家として高く評価されていたダン・ギルロイが、本作のインスピレーションを得たのは、まさに“ナイトクローラー”の存在を知った時だ。警察の無線をキャッチしながら、ロサンゼルスの街を猛スピードで走り回るフリーのカメラマンたちの世界は、映画の背景として非常に面白いと直感したのだ。ギルロイは彼らの何人かを取材した時、戦場の兵士と同じようなアドレナリンのほとばしりを感じたと言う。
    ギルロイはまた、経済格差がますます拡大した現代に生きる若者たちが、直面している問題についても描きたいと考えていた。最低賃金どころか、研修期間(インターンシップ)という名目により無償で働かされ、成功の夢を無残につぶされる若者たちが大勢いる。そんな社会から疎外された、若い世代を体現する存在が、主人公のルイスだ。彼こそ、現代社会が生んだキャラクターなのだ。
    社会の実像を鏡のように映す人物を描く、またとないチャンスだと考えたギルロイは、書き上げた脚本を自らの手で映像化したいと考え、監督デビューを決意する。

    【ダン・ギルロイ(監督、脚本) コメント】

    僕は実際に何人かの“ナイトクローラー”に会った。彼らは夜行性で、戦場の兵士や救急隊員と同じようなアドレナリンのほとばしりを感じた。中毒になっているようにも感じたんだ。撮影については、できるかぎりリアリスティックに、ほとんどドキュメンタリーに近い形にしようとしたんだ。たとえそれがおぞましい光景だとしてもキリンの赤ちゃんを殺すライオンを道徳的に批判しないだろう?ありのまま世界を見せるだけだから、道徳的判断は介在しない。それが僕たちが捉えようとした要素だ。
  • 12キロの減量から始まった不世出の怪演

    写真 怪演ギレンホール
    ギルロイの脚本を読み、そのパワーに感銘を受けたジェイク・ギレンホールが、主役兼プロデューサーとして参加することになる。「これまで演じてきたどの人物とも全く違った」と、ギレンホールはルイスというキャラクターと出会った時の驚きを語る。「実に奇妙な男だ。ルーは何時間もかけてネットで情報を漁り、世の中についての知識をそこから得ようとする。彼は情報を絶対的なものだと捉えて、そのまま吸収し、いつも驚くほど要領を得た喋り方をする。言葉使いやしぐさまで、他人のものをコピーするんだ。そしてその言葉の中に、常に真実があるのも事実なんだ。」 一方、ギルロイはルイスについて、絶望して孤独で、唯一慰めと方針を与えてくれる資本主義を宗教にしていると分析する。「ルーのバイブルは、インターネットで見つけた多国籍企業の社訓だ。彼はその内容を真剣に信じている。そうした自己啓発やビジネスアドバイスなどをネットで見つけ出しては、生き延びるための武器として磨き上げているんだ。」
    撮影前に幾度も行われたギルロイとギレンホールのミーティングで、ルイスをイメージで例えるなら、痩せこけたハイエナだろうという話になった。ギレンホールは体重を落とすと宣言し、撮影が始まるまでの2カ月の間に12キロ近くもの減量に成功する。さらに、夜通し起きて昼に眠るという生活を続けた。ギルロイはこの驚異的な変身に対して、「彼ほど自らを駆り立てる役者は稀だ」と称賛を惜しまない。
    撮影中のギレンホールについてギルロイは、「彼はこの作品のクリエイティブなパートナーだった。脚本に並外れた敬意を払ってくれて、台詞を一字一句、変えなかった」と振り返る。その件に関してギレンホールは、「ギルロイの台詞は本当に特別だからだ。僕にとって教典のようだった。撮影を終えた時、『もうこの台詞を口にすることはないのか』と寂しかったよ」と語る。
    台詞のないシーンでは即興もあった。ルーが鏡を壊すシーンがそうだ。「最初は単なる思いつきだった。何となく叫び始め、鏡を殴るうちに割れて手が切れたんだ」とギレンホールは説明する。ルーが目にするのも恐ろしい感情を、唯一表に出す緊迫したシーンとなった。

    【ジェイク・ギレンホール コメント】

    このルーというキャラクターはこれまで演じてきた人物とはまったく異なっていたよ。 準備には2カ月かけた。体重を落として、夜更かしをして日中に眠って役作りをした。 ルーは人々の感情に無関心なんだ。ルーの衝動と野心は理解できるが、彼の自分の正当化の仕方については、全く共感できないね。この映画は見方によっては、リアルな政治風刺劇とも捉えることができると思う。ルーは絶望的な状況の中で天職を見つけて、そして人々の絶望を食い物にする。これは究極のサクセス・ストーリーだと捉えているよ。
  • ルイスに容赦なく人生を変えられる二人のキャスティング

    写真 レネ・ルッソ
    ルイスの映像を高く評価するニーナ役には、ギルロイの妻のレネ・ルッソが扮している。ギルロイはルッソのためにニーナの役を書いたと語る。「レネなら、必ずこの役をこなせるとわかっていたからね。彼女には、外面的なタフさと内に秘めた繊細さを表現する優れた演技力がある。彼女と共に現場で楽しく仕事をし、作品づくりができるなんてラッキーだった。」しかし、ルッソの方は、1度だけ撮影中に激昂したと打ち明ける。ギルロイにもっと過剰な演技を求められたからだ。完成した作品を見たルッソは、「でも、彼の言うとおりだった。あのシーンには必要だったわ」と認めている。
    写真 リズ・アーメッド
    ギレンホールは、ルイスの相棒であるリック役のキャスティングに熱意を注いだ。70人ほどオーディションしたが、すべてギレンホール自らが読み合わせを務めた。その結果、1回目のオーディションから全員を驚かせた、パキスタン系イギリス人俳優のリズ・アーメッドが選ばれた。アーメッドは最初に脚本を読んだ時、「散文のような見たこともない脚本に衝撃を受けた」と語る。さらに痩せていくギレンホールを見て、最初は物語と関係ないのにと困惑したと語る。だが、撮影が始まってすぐに、ギレンホールがいかに天才的かと気付いたと言う。「ルーは絶望して飢えている男だ。ギレンホールは、まさに彼そのものだった。」
  • 知られざるロサンゼルスの素顔と激烈なカーアクション

    写真 カーアクション
    かつて、これほどの広範囲にわたって、ロサンゼルスの街を映し出した映画はない。プロダクション・デザイナーのケヴィン・カヴァナーが、エコーパーク、アンジェリーノ・ハイツなどを探し回り、75か所以上のロケ地を見つけた。ロサンゼルスに20年在住するギルロイは、「自動車で溢れかえる不毛の地」というこの街のステレオタイプ的なイメージを覆したかったと語る。「街を囲む海や山脈、そこに吹く強い季節風などが醸し出す自然本来のフィーリングや、野性的なスピリットを捉えたかった。広大な砂漠を望む街の胸を打たれるほど強烈な美しさを映像に残したかったんだ。」
    撮影監督のロバート・エルスウィットは、広角レンズとヴィヴィッドな色彩を駆使し、「人間がアウトサイダーとなる荒野の孤島」というギルロイが思い描くロサンゼルスのヴィジョンを実現した。撮影は主に午前0時から6時の間に行われた。この時間帯の撮影は、キャストにもスタッフにも負担を強いるものだ。だがギレンホールは、深夜に撮影することでインスピレーションを得たと言う。「頭で考えることをやめて、感情に身を任せるようにした。撮影中に感じていたことや、起こったすべての物事は、映画のあらゆるフレームに深く刻み込まれる。それが僕の信念なんだ。」
    大がかりなカーチェイスは、通りを封鎖して撮影された。カーアクションのシーンでは、記者たちが鮮烈なニュース映像を求めて、すさまじい勢いで街を駆け巡る。第2ユニット監督のマイク・スミスは、ワールドクラスのスタントドライバーチームを使って、これらのシーンを実現した。「ロサンゼルスのベンチュラ大通りで、時速145キロで走っている3台の車を衝突させるなんてシーンは、どれだけきちんと計画しても予想通りにはいかないものだ。でも、マイクが驚異的な手腕を発揮してくれたおかげで、上手く撮ることができた。予期せぬことも起きたけれど、それはいい意味でのサプライズだったね」とギルロイは振り返る。
  • テレビ業界の裏側とおぞましい現代社会の真実

    写真 怪演ギレンホール
    テレビ業界の裏側を描くにあたって、ギルロイはリアリティを追求するために、途方もない量のリサーチを行った。ローカルニュース局が視聴率を上げるために、虚偽の犯罪報道を行うという事実にも迫った。「恐怖を売り物にすることによって、広告料金をキープするというアイデアだ。人々の間に危機感を植え付けることで、彼らを食い物にするんだ」とギルロイは説明する。
    だが、ギルロイは誰かを名指しで非難することを避け、常に中立を保つよう注意を払った。一つのスタンスとして、野生動物であるルーのドキュメンタリー映画を撮影しているかのように心がけたと語る。「あらゆる要素に、どのような道徳的判断も下していない。映画の狙いは、観客に自分自身の知らなかった部分を、ルーというキャラクターや、彼の活動する世界の中から見出してもらうことなんだ。各々が、それぞれ異なったメッセージを受け取ってくれることを願っている。」
    写真 テレビ業界
     「捕まらなければ、何をしてもいい」と考えているルイスが、テレビニュースの世界で成り上がっていく様は、古典的なアメリカのサクセスストーリーだ。だが、そこにはダークな仕掛けがあると、ギルロイは解説する。「映画の冒頭では、ルーは失業中で底辺の生活を送っている。物語は彼が仕事を探すところから始まり、成長ビジネスのオーナーになるところで終わる。彼にとってはハッピーエンドだが、社会にとっては悪夢のような結末だ。悪魔が成功するという邪悪なストーリーだと受け取る人々もいるだろう。でも、本当に恐ろしいのはルーではなく、彼という人物を生み出し、褒美まで与えてしまう社会なんだ。そのおぞましい事実を伝えたかった。」